インファント

患者が押し込められた幼稚園は酷い物であった。1クラス50人のぎゅうぎゅう詰め。先生は一人。いつもやっつけ仕事で子供を物のように扱い、愛情のかけらもない。給食は子供に取りに行かせるのだが、整列などせず組んずほぐれつの大乱戦状態、暴れ者が大人しい子に肘鉄を食らわせて食料を奪う。患者は牛乳のストローが無かったので仕方なくストロー無しで飲もうとしたら、先生に怒鳴られた上にひっぱたかれたという。
そんな中、縁日の夜店で患者はカラーひよこと出会った。スプレーで赤や青に着色され、箱にぎゅうぎゅう詰めになっている。弱って死にそうになっているひよこもいて、強いひよこにつつかれてますます弱っていく。それを見て患者は、
「ああ、これが私だ」
と思ったという。
これを母親に伝えようとしても、ろくに言葉を教えられていなかったので「ひよこが、ひよこが、」としか言うことができず、母親にとってはひよこを欲しがっているようにしか見えなかったようだ。
その幼稚園は、今はもう無いらしい。