大切なものから捨てる病

昔から掃除や整理整頓が苦手だった。今でも荷物は増え続けており、片付ける時間は取れない。
一方、患者さんは整理整頓が好きである。しかし鬱病解離性障害が邪魔をして体が動かない。その上、部屋は僕の荷物であふれかえっている。きれい好きには苦しい状況だろう。
こんなときもまた、彼女は自分を殺す道を選びそうになる。
「自分の荷物が減れば、そのぶん部屋が広くなるから」
そう言って、自分の荷物を捨てようとする。しかも大切なものから。
このことにもはっきりとした原因がある。彼女の母親が、彼女の必要なものを日常的に捨て続けていたのである。
いるものといらないものに分けると、必ずいるほうを捨てられる。あまりにも捨てられるので、箱に分けて「いるもの」「いらないもの」という張り紙を張っても、いるものの方が捨てられる。
ここで、母親の願望のようなものが見えてきた。
捨てられた「いるもの」の箱に入っていたのは、日用品や趣味のもの。
残された「いらないもの」の箱に入っていたのは、使い古した勉強道具。
つまり、「遊んでいないで勉強しなさい」ということではないだろうか。
結果として子供は壊れたわけだが、母親にはそれが自分のせいであるという自覚が近年までなかった。奥地圭子を相手に「自分は間違ったことはしていない」と言い放ったほどだ。最近は反省しているようだが、捨てる捨てないについてはおそらく覚えていないだろう。
さて、晴れているので昼のうちに少しは整頓するか。めんどくさがってたら悪循環だしね。