自爆テロ犯の90%が・・・

自爆テロ犯の正体が見えてきた 犯人の90%が障害者 社会保障の充実がテロを防ぐ(日経ビジネス オンライン)

 今や世界の麻薬王として潤沢な活動資金を誇るタリバン勢。しかし彼らがいかにして自爆テロを決行するテロリストたちをリクルートし、養成しているかについては謎に包まれていた。カブールで過去に起きたすべての自爆テロ犯の死体もしくはその身体の一部を検査した鑑識官Yusuf Yadgari氏が以下の驚くべき結果を発表するまでは・・・。同氏が今年の5月に発表した報告書によれば、自爆テロ犯の90%は何らかの障害を持っている人たちだった」というのである。NATO・アフガン軍とタリバンの戦闘が激化する中で、タリバンは社会から隔絶され最も社会的に脆弱なグループに自爆攻撃をやらせていたのである。

 30年以上内戦状態にあったアフガニスタンにおいて、対人地雷で足を失ったり、失明した人は膨大な数に上る。首都カブールにおいてはそれでもある程度の社会保障サービスがあるものの、田舎に行けば最低限の保障すら受けられないことがほとんどだという。健常者であっても職を得るのが大変な中で、身体的・精神的な障害を持つ者が職を得ることは極めて困難である。誇り高きアフガン人は家族を養うことができない自分の無力を恥じ、絶望感に浸る。こうして将来に対する希望と展望を失い、社会から孤立する障害者たちに、タリバンのメンバーが悪魔のささやきをするのだという。「君は生涯何もできない役立たずだ。家族を食わしていくことさえできないではないか。天国に行ったらどうだ、そうすれば我々が家族の面倒を見る・・・」と(『Globe and Mail』 2007年5月7日付)。

 自爆テロ実行者の家族に支払われる報酬は、数年前までは250ドル程度だったものが、現在では麻薬による収入増を受けて10000ドルから 15000ドルにまで上がっているという。アフガニスタンの経済事情からすればそうそう稼げる額ではない。わが国で住宅ローンを抱え、家族を養うすべをなくしたリストラされたサラリーマンが、自殺する心理状態と似ていると言えるかもしれない。つまり自爆テロ犯は「タリバン」などではないということである。将来に対する希望を失い、そうすることでしか家族を養うことができない社会的弱者たちによる、命を捨てた最後の仕事が「自爆テロ」の正体だったわけである。