患者の母親と叔母と対話

 患者さんの叔母(母親の姉)が福岡に来ており、お話をする機会があった。この人は話せる人だ。
 前回も聞いた話だが、「次代を担う若者がこんなにも苦しんでいるのを叔母として看過できない、私に何かできることはないだろうか」という。話し合いの末、やはり見守るしかないこと、時々はお菓子を送りあうのがお互いのために良さそうだということが伝わった。
 この人と深く話し合うのは2度目だが、疑問の多くに納得のいく答えが得られたようだ。しかしそれは苦しみに満ちた答えだったはずだ。自分の妹の常軌を逸した育児放棄ぶりと、妹の夫の想像を絶する無神経ぶり。その結果、姪が地域社会でどれほど惨たらしい仕打ちを受けたのか、初めて全貌を知ったのである。言葉を失い、目を閉じ、眉間にしわを寄せ、顔を手で覆った。
 想像を絶する事態には、想像を絶する理由がちゃんとある。経験したことのない人間には想像できないだけであって。個々の事情を把握せずに安易な一般論を持ち出すことは、解決どころか傷を深めるばかりであることを知ってほしい。はい、ここ、テストに出ますよ。
 不謹慎ながら面白かったのは、姪の自殺未遂について叔母が知らなかったこと。妹とは密に連絡を取り合ってたにもかかわらず。そうか、叔母さん、あれを知らずにクッキーの詰め合わせを送ってきたのね。僕が「え?ご存じなかったんですか?」と聞いたときの表情ったら、もう…。