皇室とY染色体

僕の後輩が苦しんでいる(id:VieilleGarde:20051205#p2)。皇室が存亡の危機だという。そんな彼の一助となれるよう筆を執ってみた。
先に言っておくけど、僕は皇室には興味が無いし、皇室が日本人の心の拠り所だなんて思ってもいない。その代わり、皇室を廃止しようとも思っていない。憲法で守られた信仰の自由の範囲で清く正しく美しく存続してもらえたらと思っている。
さて、巷の言説に寄れば「Y染色体は男性しか受け継ぐことができないので、女性天皇を容認したら、連綿と受け継がれてきたY染色体が途絶えてしまう」とのことで、「それを理由に皇室が廃止に追いやられる」ということらしいが、まずここで2つだけツッコミを入れさせてもらう。

  • 染色体は交配の際に分解され再形成される。その際に、男女のものが交じり合って新しく生まれ変わる。ましてや125代も続けば、かなりの部分が入れ替わっている可能性がある。
  • 神武天皇Y染色体を受け継いだ男性は日本中にごろごろいる。皇室に近い血筋なら可能性は高い。

つまり、男系を維持する意味合いは科学的には薄い男系を貫き通す理由としてY染色体を持ち出すのは科学的根拠に欠けると言えよう。
そんなことよりも、ミトコンドリアに注目してみたらどうか。ミトコンドリアは女性から女性にしか遺伝せず、人類の系統をたどる研究に使われていたりする。だから、皇室の廃止を恐れるのであれば、次代からでも女性天皇を容認し、ミトコンドリアを持って女性天皇の正当性を主張してみてはどうか。
とはいえ、後輩のような思想の持ち主が苦しい立場に立たされていることには間違いない。この後継者問題は今に始まったことではなく、今から対策を打つには遅すぎると思う。


まー、他にも言いたいことがあるのよ。
君のその心理は「日本人の本能」ではなく「明治から昭和の亡霊に取り付かれている」とか「懐古趣味によるセンチメンタリズム」であるとか。強く美しい日本を作ることと天皇制は関係ないこととか。先人はともかく現代の多くの者にとって皇室は心の支えではなくなってしまっていることとか。側室を廃止した時点で男系を維持するのは統計的に無理がある、つまりこの問題は今に始まったことではない、とか。
つまり、どの道を選ぼうにも焼け石に水であるわけで、もはや別の方面から明るい未来を考えたほうが国益になるんじゃない?