彼女の実家で、行き場を失った花を引き受けることになった。
扱いに困るような大振りの花を置いていく突然の来客。生け花などできない母親は困った困ったと繰り返す。よそならば皆に愛されるであろう白いつぼみも黄色い大輪も、ここでは厄介者だ。そこで彼女は自分が引き取ることを申し出た。
帰りの車の中で彼女はつぶやく。
「花はね、大切なの。私みたいなことにはさせない」
家に帰り着き、彼女は自己流で花を生け、玄関に飾った。素人技だが、さほど悪くない。
「これでも愛情を込めたつもりよ」
花がしおれるその日まで、この場所は潤い続けるだろう。