町内会費と世間話

 きのうのこと。
 まとめた町内会費を会計係に届けに行った。
 団地は高齢化が進んでおり、寄り合いにも年寄りしか出てこない。必然的に40歳未満の人間は目立つため、話す機会がなくても顔は覚えられている。
 会計係のおばちゃんとの何気ない世間話の中で、当たり障りのない質問が投げかけられ、こちらも当たり障りなく答える。
「あんちゃんのところは子供はまだかい」
「ええ、まだです」
 ご近所の話、結婚の話、出産の話、子供の話。ネットなど見たこともなさそうなこの世代の人々の会話は、とてもおおらかで、明るくて、人間的で、地域密着型で、生活臭がただよいまくっていて、そしてちょっとエッチだ。
 おばちゃんは真顔でこんなことを言い放った。
「もしかして子供の作り方を知らないんじゃないかね」
「いや、さすがにそんなことは」
 否定する僕をよそに、おばちゃんは向かい側に座っているおじさんをゆびさして、こう言った。
「作り方がわかんなかったら、そこのAさんに聞くといいよ」
 呼ばれて振り向いたAさんの明るい笑顔からは、エロいオーラがコタツの赤外線のように放射されていた。老いてなお健在、といった感じである。盆踊りの準備の時に、昔は赤線がどうのこうの、という話で盛り上がっていた人だったかもしれない。
 その向こう側にいる別のおばちゃんが、
「あたしも習いに行こうかねえ、あっはっは」
 と豪快に笑った。見た感じ、閉経後四半世紀といったところだろうか。きっとそんなことはどうでもいいのだろう。開き直れば何でも笑いの種になる。
 悩み多き年頃、という表現がある。年齢とともに悩みの量も質も変わる。こんなに明るいこの人たちも若い頃は悩み苦しんだのだろうか。そして、今の若い世代は年寄りになったときにこうなれるだろうか。