叫び

例会に参加中、自宅で療養中の患者から電話がかかってくる。
黒い虫に全身を貪り食われる夢を見たという。さながら死んだセミがアリに分解されるかのように。そして自分の弱さを恥じて自分を殴ったという。
その様子をこちらに報告する途中で、虫に目玉をえぐられる感覚を思い出し、ものすごい勢いで叫んだ。
こっちは受話器から耳を離さずにはいられなかった。
会場を見回すと、参加者2名がこちらを見ているので、念のため聞いてみた。
「あの・・・これ、そっちにも聞こえてますよね?」
「うん」
恐ろしい叫び声は数分間に渡った。窓が空いてたら、きっと「あの家では奥さんがDVを受けている」と思われたに違いない。
「俺、公団を追い出されるんじゃないかなぁ・・・」
「早く帰ってあげて」
家に帰ると、幸いにして窓は全部閉まっていた。防音サッシで良かったと思った。
さて、頭を殴りすぎるとシャンプーが大変だ。ちゃんと風呂に入れるだろうか。