クッキーはママの味

朝。昨夜、錯乱した患者が拳で2発ほど殴った額の中心が、ぼっこりと膨らんでいた。
頭のおかしい人とのやりとりが続く。
「こ、これ、す、すごい、よ、いたい、よ」
「どれどれ」
「ぎゃああああああ!!」
「痛いのか」
「い、いたい、いたくない、いいにおい」
「はぁ?」
「ひたいからいいにおいがする、よ」
「いいにおい?」
「クッキー、ロゼッタちゃんのママが焼いた、いいにおい」
「クッキー?」
「か・・・カントリーマアム!」
その後、ロゼッタちゃんの家が悪徳不動産屋に奪われ、親子は離れ離れになり、ロゼッタちゃんはクッキー工場で強制労働させられることになるのだが、ママから教わった秘伝のレシピを悪徳工場長に奪われ、ママに会える日を夢見ながら、ロゼッタちゃんはけなげに働きつづける、という妄想を聞かされた。