コミケの思い出

今日もまた患者のトラウマがひとつ成仏していった。
今回のネタは、数年前に日本中を席巻した某ビジュアル系バンドに関するもの。
取り留めなく散乱した話を整理すると、次のようになる。

  • 患者(仮にAとする)が17歳の時の出来事。
  • Aには姉のように慕う親友(仮にBとする)がいる。
  • Bは同人誌を書いており、当時、某ビジュアル系バンドに傾倒していた。
  • BにはAにはない同人的な交友関係(仮にC群とする)があった。
  • BとC群との関係は、某ビジュアル系バンド(面倒くさいので仮にGとする)に傾倒してからのものであり、日は浅い。
  • Aは、強迫観念とも言える真面目さから、「いつの日かC群に出会ったときに会話が成り立つように、Gについて予習しておかなければならない」と思い、Gに関する雑誌や書籍を読み漁った。メンバーの名前、役割、生年月日、発表された曲目、その歌詞に至るまでを、可能な限り暗記した。

そして7月の同人誌即売会が開催され、AはBのブースにてC群と対面することとなる。
事件はBがいないときに起こった。
A「私、 ○inter ○gain が好きなんです」
C「はぁ?詳しくない人に語られてもね」
Aの受験勉強ばりの努力は、その一言で水泡に帰した。
その後、「詳しい人々」を自負するC群は、Aを無視して一致団結し、盛り上がる。
居場所を失ったAは一人でファイナルファンタジー系の人気サークルの行列に並ぶのだが、遅れて会場にたどり着いた自分が見かけたときには、その周囲には空気がどす黒く見えるほどの異様なオーラが放たれており、明らかに周囲から浮いていたのを覚えている。
健康な人間ならここで相手を憎むものだが、筋金入りの病気がそうはさせてくれない。たとえ自分のせいでなくても、「起こった事象はすべて自分のせいである」という脳内変換が起きる。そのため、この件について語る(取り乱す)とき、相手への怨念を撒き散らしながら自分を責め立てるという、珍妙(と呼ぶには怖すぎる)な現象が起きる。
この件については過去に何度かフラッシュバックし、そのたびに大変な思いをしたが、今回でようやく怨念が成仏したようだ。彼女も何かを悟ったらしく、過去のような激しい取り乱し方はせず、実に落ち着いたものだった。ここまで良く成長したと思う。
さて、通を自負するC群は、通にしか分からない専門的な会話で盛り上がっていた。
それは確かに雑誌やテレビでは絶対に出てこない専門的な知識だった。
「やっぱライブの後にバックから掘るっしょ!」
「マイク使うんだよ、マイク」
「そんでマイクのスイッチ入れてスピーカーから音を出さない?」
・・・。
彼女たちに幸あれ。